堕天使とは何か
堕落した天使、天使のアンチテーゼ、天使でありながら神に背反し天界を追放された存在、それが堕天使である。同様に天使の対極に位置する存在として悪魔の存在があるが、天界を追放された堕天使たちの成れの果てが悪魔であるとして、堕天使=悪魔と見なされることが多い。 厳密にいえば、堕天使と呼ばれるもの全てを悪魔と結びつけることはできないし、悪魔においてもかつて天使だった者たちばかりではなく例外もある。あえて堕天使と悪魔を分けて簡潔に定義するなら、堕天使:天使として生まれながら、堕落、神への反抗などの理由から天界を追放されている者たち悪魔:神に反する者、人間を悪の道に導く者、地獄に住む者 このページにおける堕天使と悪魔の解説については、堕天使=悪魔という見方にそって説明をしている。堕天使と悪魔を結びつける理由としては以下の天使の自由意志の説に従う。 ユダヤ教は史上でも初めての唯一神教である。それはキリスト、イスラム教でも受け継がれている。そして神が万物の創造主であり、この世の全ての事象は神が創りだしたことになる。それならば、なぜ神は自然の災害や病気までも生みだし、人に争いや悪行などを犯すように創ってしまったのか。 それらは全て神と敵対する悪魔たちの仕業によるものとされた。だが、万物の創造主が神である以上、悪魔たちもまた、神に創られたことになる。なぜ神はわざわざ自分に敵対してしまうような存在を創ってしまったのか。それを説明するためにいるのが堕天使であり、天使の存在なのである。 神は自分の手足となって動く御使いとして天使を創造した。天使とは神の意志に従い、その意志を実行するために創られたものだから、常に神には忠実であり続ける。しかし、神はそうした天使たちとは別に自由な意志を持った天使も創りだした。それは、通常の天使が初めから神を崇め敬うように創られているのとは違い、彼らが神を敬うか敬わないかは彼ら自身にゆだねられるのだった。なぜそのような存在を創ったのか。 それは、神が初めから自分を敬い愛するように定められているものたちからの敬愛だけでなく、自身の自由な意思を持つものからの、自発的に起きる愛により価値を置き、それを求めたからとされている。 ところがそうして自由意思を持って生まれた天使たちの多くが神を裏切り、堕天使となってしまった。そして悪魔と呼ばれる存在となった。 だが、こうした説明はすべての出来事を善なる神一人に帰してしまったことによって生じた矛盾を解決すべくつくられていることも否めない。 二元論 もともと旧約聖書には悪の存在や堕天使の観念はなく、人に災いをもたらす存在はハ=サタンと呼ばれていた。この言葉は対立する者といった意味で使われ、ハ=サタンとは人に試練を与えるといった役職のようなものであり、神と敵対する存在ではなかった。 ユダヤ教に善と悪の二元論が持ち込まれたのはゾロアスター教の影響ともいわれる。 ゾロアスター教では、この世は善神アフラ・マズダーと、悪神アンラ・マンユとの絶え間ない闘争にあるという。このゾロアスター教の善と悪の存在の概念が、後になってユダヤ教に取り入れられ、結果、その派生であるキリスト、イスラム教にも影響を与えることになったようだ。 しかし、善のみの一元的存在である神が、結果として悪なる堕天使(悪魔)たちをも生み出してしまったことはやはり矛盾をはらんでしまっていると言える。
by sigma8jp
| 2008-10-30 04:29
| 堕天使と悪魔の階層
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