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「グノーシス主義」とは

  「グノーシス主義 Gnosticism」と呼ばれている思想乃至信仰は、その原義からは、紀元一世紀より、三世紀乃至四世紀頃まで、ヘレニク世界・地中海世界において流布した、独特の世界観と神観・人間観を持つ「教え」です。

「グノーシス主義」と云う名称は、一つに、この教えを説き、信奉していた複数の様々な派の人々が、自分たちを「知識ある者=グノースティコイ γνωστικοι (gnoostikoi)」と自称していたからですが、この名称が定着したのは、当時、擡頭しつつあった原始キリスト教会が、グノーシス主義運動を、キリスト教にとっての重大な「敵・障碍」であると見做し、「グノーシス主義異端」として、排斥しようとしたためです。

(その理由には、キリスト教的グノーシス主義者たちが、自分たちこそ、「キリストの啓示」の真実の意味を知る、「真のキリスト教徒だ」とも称していたことがあります)。

従って、西欧の思想の伝統において、「グノーシス主義」と云う概念は、キリスト教と密接な関係にあり、長い期間において、初期キリスト教会が、グノーシス主義諸派に対して与えた「異端」と云う烙印を、そのままに受け入れていました。グノーシス主義は、その「思想原理・世界観・人間観」等からすれば、キリスト教の「異端」ではなく、「異教」と云うべきであり、事実、キリスト教とは全く無縁なタイプのものも存在します。

また、グノーシス主義一般が、キリスト教の「異端」ではないことは、多くの研究者のあいだで、今日、同意を得ています。とはいえ、この文書では、紀元の数世紀、地中海世界領域にあって繁栄し、原始キリスト教会より、異端とされたグノーシス主義の考えについて、主に説明し論じます。

わたしたちは、このような意味のグノーシス主義を、取りあえず、「ヘレニク・グノーシス主義」と呼びます。それに対し、思想原理よりして、明らかに、キリスト教とは独立していることが明らかな、「グノーシス主義の原型的」形態については、これを(ヘレニク・グノーシス主義も含め)、「普遍グノーシス主義」とも呼びます。普遍グノーシス主義は、ヘレニク・グノーシス主義よりも広義な意味内包を持ち、また、地理的歴史的にも一般性を具備する思想・信仰の概念です。

と云うことで、以下においては、ヘレニク・グノーシス主義(とりわけキリスト教的グノーシス主義)を、取り上げます。このグノーシス主義は、次のように概説されます。
by sigma8jp | 2008-11-14 21:54 | 古代叡智(グノーシス主義) | Comments(0)
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