◆水の精霊
古来より水の精霊(水霊)に関する話は多く、泉から女神が出てきて褒美を与えてくれたり、池を汚したら主(ヌシ)が怒って人々に罰を与えたという話は枚挙にいとまがありません。中世の錬金術師パラケルススはこうした水霊に「ウィンディーネUndine」の名を与え、地のノーム、火のサラマンダー、風のシルフとともに四大精霊の一つに数えました。ちなみにウィンディーネという名前はラテン語で「水のような」「波のような」を意味するウンディーネUndineに由来すると言われています。 ↑ 曲は、「ブライアン・イーノ & ハロルド・バッド」 アルバム : Ambient 2 : The Plateaux Of Mirror ◆伝承に見るウィンディーネ 日本の昔話に「水神様」に関する話が多いように、ヨーロッパでも水霊は人気の的です。いろんな民話・伝承にこの精霊が登場し、時には報償を施し、時には厳罰を課して、人間たちに希望と教訓を与えます。 「アーサー王物語」の中にも「湖の貴婦人」「グウレイグ」と呼ばれる湖の精霊たちが登場します。彼女たちは若きアーサー王を陰に日向に支えて、その覇道に大きく貢献しました。聖剣エクスカリバーを与えたのも、臣下に裏切られて瀕死の重傷を負った王を「アヴァロン」と呼ばれる異界に連れ去ったのも、この貴婦人たちであるとされています。 ギリシャ神話には「ニンフ」と呼ばれる精霊たちがしばしば登場しますが、彼女らもやはり水霊としての性質を色濃く持っています。民話や伝承の中にも、水辺で精霊たちが遊んでいるのを見て恋情を覚えたとか、精霊が神々に言い寄られたという話がいくつも残っています。「羽衣伝説」で有名な天女も、やはり海辺で遊んでいるところを捕らえられました。日本各地に残る「龍神様」の伝承も、ある意味ウィンディーネの伝承と言うことができるかも知れません。 ◆悪魔とウィンディーネ 一部のウィンディーネは、しばしば悪魔としての側面を持ちます。旧約聖書に登場する水霊アリトンは、悪魔王ルシファーの協力者でもあったことから、後世にはデーモンの一種と見なされました。ルシファーを女性化した「ルシフェーラLucifera」も、しばしばウィンディーネのような姿で描かれることがあります。 アンデルセンの有名な童話「人魚姫」も、よくよく読んでみると、こうしたデーモン・ウィンディーネのイメージを下地にしていることが分かります。悪魔と人間の契約と言えば、あるものを与える代わりに、本人が持つ最も大事なものを差し出させるというものですが、人魚姫も足を得る代わりに美しい声を失いました。また、王子との恋に破れ、泡となってしまう部分についても、悪魔(=水霊=人魚)が魂(=相手の心)を手に入れられなかったゆえにその存在意義を失い、本来の水に戻ってしまうことを示しています。 ◆ウィンディーネの姿 男性のウィンディーネもむろん存在しますが、伝承に登場する彼らは、女性の姿を取ることが多いようです。水浴びする女性の姿が、あたかも精霊のような雰囲気を漂わせるからでありましょうか。女性のウィンディーネたちは例外なく情熱的な性格で、しばしば人間の男性と恋に落ちます。しかし、その恋が完全な形で成就することはほとんどありません。 ドイツの作家フリードリヒ・フーケはそのものずばり「水妖記(ウィンディーネ)」と言う作品をものしています。人間の騎士フルトブラントとウィンディーネの女が情熱的な恋をする作品ですが、騎士の方が人間の娘ベルタルダと結婚、あまつさえウィンディーネに暴言を吐くという「禁忌」を犯してしまったため、ウィンディーネは泣く泣く騎士に復讐せざるを得なくなるというお話です。ここでも「ウィンディーネ=情熱的な女性」と言う設定が生かされています。 恋愛以外の場合でも、彼女らに悪口を言うのは最大のタブーです。バカにする意思はなくても、水辺でウィンディーネを侮辱するような発言をすると、水の中からウィンディーネたちが飛び出して襲いかかり、水中に引きずり込まれます。こうしたタブーを犯さなければ、彼女らは決して人間に危害を加えることはありません。 ■亜種・別名など ウンディーネ/アンダイン/ニクス/ニックス/ネック/グウレイグ/オンディーネ/オンディーヌ/湖の貴婦人(レディー・オブ・ザ・レイク)/水妖/ウォーター・エレメンタル(水の精霊)
by sigma8jp
| 2008-11-22 23:11
| 四大元素霊と精霊
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本ブログは、管理人が、神秘学の世界観をインデックスとして、まとめてみたいという趣旨で掲載したものです。 本編の宇宙のプログラムに触れる前に、まず全体の骨子を理解するため、過去の偉人が残した様々な哲学や神秘思想を学びます。宇宙のプログラムを効率よく理解するためには最適なテキストとなるからです。その意味から、本ブログで紹介している多くのカテゴリは、本編の宇宙のプログラムを実践するに当たっての材料であり、そのための紹介文となっております。 又、ここに掲載されている内容は、主に(ネット・本・辞書)から引用し、編集したものです。 最新のコメント
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