カテゴリ:エジプト「ヘリオポリス神話」( 1 )

ヘリオポリス神話

  ヘリオポリスは、カイロの東北十数キロの一にあるエジプト北部における最大の宗教的中心地であった。ギリシア語でヘリオスが太陽を示すことから、ヘリオポリスは『太陽の都市』を意味していた。

ヘリオポリスの天地創造神話で、古代エジプト人は体系化された宇宙が出来上がる前は、波の起こらない水をたたえた果てしない海が暗黒の闇の中にあったと考えた。これは、”ヌー”または”ヌン”と呼ばれる原始の生物のように描かれた。

それを礼拝するための神殿は一つも建てられなかったが、ヌーの持つ神髄は、多くの宗派の聖所において、”聖なる湖”という形で存在している。この湖は、天地創造以前には何一つ存在するものが無かったことを象徴している。

この死んだような水の巨大な広がりは天地創造後も存在し続け、太陽、月、星、地球、そして黄泉の国との境界線を守りながら、天上の大空を取り囲んでいる。古代エジプト人の心の中には、常にヌーが空を突き破って地球に落ちて来るのではないかという恐怖感があったという。

このヌーという原始の水の中から、自力で生まれたのが”アトゥム”という神であった。水との関連からか、アトゥムは最初は蛇の姿をしていたとも言われるが、壁画などでは、常に人間の姿で描かれている。

アトゥムは水中から出てきたが、住むところが無かったので、まず丘を作った。 これが「原始の丘」と言われるものであった。この原始的な小山は形を整え、太陽神を支える堅固なピラミッド型の高い山ベンベンとなった。ピラミッドの発想の基礎はこの原始の丘にあったという説もある。

アトゥムは両性を具備しており、宇宙(神)を創造した。まず、シューを唾の様に「吐き出す(イシシュ)」。続いてテフネトを「嘔吐する(テフェネト)」。こうして最初に創造された双子の兄妹は、それぞれ兄シューは『空虚なもの』、妹テフネトは『湿気』を意味すると推測されている。

シューとテフネトは夫婦となり、やがて男子”ゲブ”と女子”ヌト”を生んだ。やがてゲブとヌトは結婚したが、抱き合っているところに、父親のシューが割り込んできてヌトを高く押し上げてしまった。その結果、ヌトは天になり、ゲブは地となったという。天と地の間に充満したシューは大気に他ならなかった。

先のオシリス神話に登場したオシリスとその兄弟、イシス、セト、ネフティスは、神話ではゲブとヌトの間に生まれた子供であった。これら9人の神々は、ヘリオポリスの「九柱神ennead)」と呼ばれている。

余談ではあるが、全エジプト史上でもっとも重要な神太陽神ラーもヘリオポリス起源である。 しかし、先の九柱神とは別格で信仰されたと見られている。ラー神以外の神で、ラーと習合し(例:アメン・ラー神)自らの力を高めた例が多い。

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●ヘリオポリス創世神話(世界を維持する九柱神)
神話の中心地:ヘリオポリス。古代名イウヌ(柱の都)
(下エジプト南。太陽信仰の中心地で、古王国時代から宗教の中心だった場所)
 
主要な神:九神(アトゥム(・ラー)、シュー、テフネト、ゲブ、ヌト、オシリス、セト、イシス、ネフティス)

始め世界は水と泥が混じった「ヌン(混沌)」で満たされていた。
そこから、丘「アトゥム(後にラーと同一視)」が自分で生まれ、立ち上がり、
シュー(乾いた大気)とテフヌト(湿った大気)を生み出す。
シューとテフネトは結びつき、
ゲブ(地)とヌト(天)を生み出す。
 
ゲブとヌトもまた結ばれたが、
天と地が合わさったままでは太陽が通ることができないので、
シューがヌト(天)を持ち上げ、二人を引き裂く。
こうして、地は下にあり、天は大気に支えられて地を覆ったという。※2

太陽は通れるようになったが、
怒りが収まらず、ヌトに「360日どの日も子を産んではならぬ」と告げる。
(360日は太陽暦で一年すべての日。)
それを知った知恵の神トトが、月と盤上ゲームをして勝ち、
5日の閏日(太陰暦)を得、ヌトが子を産めるようにする。
そうして、閏日はそれぞれ
オシリス、セト、イシス、ネフティスの誕生日となる。
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by sigma8jp | 2008-11-10 00:57 | エジプト「ヘリオポリス神話」 | Comments(0)