シャーマンの方法論

  シャーマニズムは世界の至る所に存在し、名称は異なるが地方の共同体の重要な構成要素として存在していた。シャーマンは、魔法医、治癒師、呪師、巫女、賢者、魔女などと呼ばれるが、その本質は同じである。かれらは特殊な意識状態で、不思議な技を用いる。

第2項でアルテル・エゴに近似した意識状態として、SSC(シャーマン状意識)をあげた。これは、人類学者であり自分自身もシャーマンであるマイケル・ハーナー博士の造語であるが、シャーマンの特殊な変成意識を上手く表現している。

そもそもシャーマンとは、ヴェーダ語の「スラム」(暖める、禁欲生活を行う。)、ロシア語の「サマン」(呪術)などが語源であると言われている。ヴェーダ語の意味は興味深い。インドのヨガ行者は、行を積むことを体内にタパス(熱)を生むと言う。

そして、実際にかれらは瞑想によって体温を上昇させるのである。これがどういう生理学的システムで引き起こされるのか判明していない。熱を発生するメカニズムは、筋肉の運動、2、3の体内物質による細胞代謝の促進しか知られていないからである。

シヤーマンは恍惚状態にあって、呪的飛翔を行い予言や治療をなすものである。エクスタシーエクスタシアとは、トランス状態でもある。その意識状態とは、前述したように覚醒夢に似た境界の意識状態アルテル・エゴである。シャーマンは治療や呪術を行うので、患者や依頼人に指図し、施術する通常の意識野と、夢意識が明確に共存している。

アフリカの大地を少人数の部族で移動する狩猟民族サン(ブッシュマン)は、恍惚の踊りにより治癒の力を得る。男たちが焚き火を囲んで座る女たちの周りを一晩中踊り続ける。やがて、男たちは一人、一人と恍惚状態に入る。

男たちは、神霊のエネルギーがお腹のなかで高まり、背骨を溢れるように駆け上り、頭の中に充満するのを感じる。この恍惚状態に入ると踊りをやめて地面に倒れ込み意識を失う。およそ部族の半数の男たちがシャーマンであり、「半分死んだ」意識状態で、地下を通って天界に赴く。

かれらは理性的な世界とサイケデリックな世界の双方に存在する「境界の遊歩者」である。そもそも文明人の見る「機械的な宇宙」が本物で、よりプリミティブで感受性の強い原始的社会の見る「柔らかな宇宙」が幻想であると誰が決めたのか。シャーマンは、自己と他人、数と区分の存在しない世界を自由に往来できる。こればかりは、体験しなければ分からないだろう。

さて、文化的背景によって、シャーマンの用いる道具の名称は多々変化するが、かれらの技法は基本的に同じである。それらは意識を変成させる補助手段と、変成した意識状態で用いる武器の二つで構成される。

○ 意識を変成させるもの
◆ 幻覚物質
マヤの祭司:ビール等の低アルコール飲料の痛飲(腸内吸収のため潅腸器が用いられた。)
中米インデイオ:キノコなどの幻覚植物(ペヨーテのサボテン、ダツーラなど)南米インデイオ:タバコ、タバコ水(麻薬を用いることもある。)
西欧の魔女:ベラドンナ、マンドラゴラ(極めて致死性が高い。)

◆ 楽器
ガラガラ、ドラム、特殊な管楽器など低い音を出す単純な楽器が用いられる。リズムは必要ではない。低音領域の音は脳内部に大エネルギーの信号を発生させ、過剰刺激により、意識を遮断する。意識水準低下のための強力な武器である。

◆ 力の歌
個々のシャーマン、またはその一族によって違うが、一般に単調な反復の多い歌が用いられる。マントラと同様に自己興奮型の刺激を発生させる。カソリック教会の歌ミサに現れる恍惚境を想像せよ。宗教において歌と意味不明の詠唱は、常に最強の武器である。

◆ 儀式舞踏
スーフィー・ダンスが有名である。シベリアのシャーマンは、楽器に合わせ回転して踊りながら、トランス状態に入る。アフリカでは、踊りながら野獣に変身するシャーマンがいる。

◆ スウェット・ロッジ
北米インデイアンの用いる蒸気サウナ。治療のため、老いも若きもこの狭く暑い空間に囲いこまれる。体温の上昇は免疫作用を増大させるとともに、意識水準を低下させ、意識変成の引き金となる。大汗を流しながら陶然とした患者は癒されていく。

◆ 焚火、松明、蝋燭
これらは電気照明のない時代に連続光による脳内の「光ドライブ」を誘因する手段として用いられた。ストロボ光の続くディスコなどで、連続した光を浴び続けると軽い陶酔状態に移行する。

◆ 力の物体
荒野で見つけた石、乾いた動物の骨など外見上は特別なものではないことが多い。これらはアルテル・エゴで見て始めて価値が生まれる。そして、しばしば、その形態が個人的な意識変成の引金となる。

○ 変成した意識で用いるもの
◆ 守護霊
アステカのナワーリ、

◆ 霊的盟友または力の動物
魔女の「使い魔」は、歪められた「盟友」の例である。
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by sigma8jp | 2008-12-26 00:47 | Comments(0)
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