無理数の恐怖( 8 )

  ところが、ピタゴラスは、その純粋性にこだわりすぎていた様子がうかがえるのだ。彼は、宇宙万物はすべて数学的にスッキリした比率で成り立っている、いや成り立っていなければならないと考えていたようなのである。

そのため教団は、どこまでいってもスッキリした解答が得られない無理数の存在を否定したといわれる。

「無理数だと! そんなもの、幽霊のようなものだ!」
だが、その幽霊はどこまでもついてまわった。√2すなわち、1.414213562・・・という、果てしなく続く数の羅列は、神は調和であるとする教団にとって、悪夢に等しかったのである。

無理数の存在を口にすることは最大のタブーとなり、この秘密を公衆の前で口にした学徒のひとりヒッパソスは、船から突き落とされて殺され、また外部の人間で√2の存在を主張する者は、宴会に招かれたあと暗殺されたという噂さえ起こったくらいだ。

もっとも、やがて教団は無理数の存在を認め、これは万物の進化過程を示したものだと片付けた。進化が無限に続くように、無理数も無限に続くというわけだ。

神が調和であることは間違いなく真実であろう。だが、それが地上に顕現したときには、無理数的なズレやゆらぎのある調和になるのだ。しかし、それでいいわけだ。なぜなら、その調和には生命が、魂が、そしてこういってよければ、神が、宿っているからである。
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by sigma8jp | 2008-11-18 21:26 | 「天球の音楽」と聖なる七音 | Comments(0)
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