■金縛り体験と夢魔
外国でも悪魔や霊魂などとの関係が信じられており、夢魔(nightmare, incubus, succubus)がこれに相当する。図は18世紀末の画家H.Fuseriによって描かれた夢魔(The nightmare: 1781)という作品である。 ■淫魔という名の悪魔 インキュバス(サッキュバス)はインクブス(スクブス)とも呼ばれる、淫魔に属する存在です。淫魔とは性愛を司り、精神的な部分から人間を堕落させる悪魔の総称で、特にキリスト教の説話の中で言及されてきた。インキュバスが男性、サッキュバスが女性で、両者ともに美しい姿を取ることで知られている。 彼らは、その姿をもって異性を(場合によっては同性も)誘惑し、堕落させ、その精気を吸い取ります。一説によれば、彼らは特定の悪魔ではなく、悪魔の持つ一面を表すものだとも言われている。魔女たちがインキュバス(サッキュバス)に化けると考えられたこともあった。 彼らの名前は、インキュバスがラテン語の「上にのしかかる」を意味するInkubo(Inkubo)から、サッキュバスが同じく「下に寝る」を意味するSuccubaに由来する。なぜ「上にのしかかる(あるいは下に寝る)」が由来なのかは定かでない。 また、夢魔のうち男性型のインキュバス(Incubus、インクブスとも)は睡眠中の女性を襲い、妊娠させる。女性型の夢魔は、サキュバス(succubus、サッカバス・サッキュバス・スクブス・サクバスとも)といい、睡眠中の男性を襲い、誘惑して精を奪う。 どちらも、自分と性交したくてたまらなくさせるために、襲われる人の理想の異性像で現れる。それぞれラテン語の「のしかかる(incubo)」、「下に寝る(succubo)」に由来する。一説にはインキュバスとサキュバスは同一の存在であり、自身に生殖能力が無いため、人間の生殖能力を借りて繁殖しているとされる。 ヨーロッパのある地方では「枕元に牛乳があると、サキュバスはそれを精液と間違えて持ってゆく」と言われ、悪魔よけに小皿一杯の牛乳を枕元に置いて眠るという風習があった。 ルネッサンス時代には「インキュバスは実際に女性を妊娠させうるか?」という議論が真面目に行われていた。というのも、この時代は生活環境の変化によって人々が性に奔放になり、都市部の若い(時には少女とも呼べるほどの年齢の)女性が父親不明の私生児を抱える例が多かったのである。 ■インキュバス/サッキュバスの能力 彼らは人間へ近づくのに「夢(淫夢)」という手段を使います。夢の中で徹底的に快楽を尽くさせることで人間を堕落への道に引き込む。ゆえに、「夢魔(むま)」「ナイトメア(悪夢)」の名前で呼ばれている。 男性の姿をしたインキュバスは女性を籠絡し、彼の子供を産ませる。女性の姿をしたサッキュバスは逆に男性と交わり、悪魔や精霊を生む。とある説では、インキュバスとサッキュバスは同じ悪魔が化けたものであり、サッキュバスの姿で手に入れた精気を、インキュバスの形で女性に放出するという。なお、美しい姿は見せかけで、その正体はこの上なく醜い姿であるとも言われている。 そんな彼らの弱点は、「ホリーシンボル(聖印)」である。特に十字架などを枕元に置いておけば決して近づくことはない。 ■インキュバス/サッキュバスの子供たち インキュバス(サッキュバス)と人間のハーフは魔法などの特殊な能力を身につけたり、あらゆる能力に秀でることから、しばしば凡庸な両親から生まれた子供が飛び抜けて優秀だったとき、「奴はインキュバス(サッキュバス)の子供なんだ」とやっかみ半分に言われることもあったようである。 もちろん、その中には「両親の本当の子供でない」場合も多々あったと思われる。浮気をして子供を孕んでしまったときに、「淫魔のしわざだ、私の知らないところで子供を孕まされたのだ」とごまかすパターンもあったかも知れない。ちなみに、「アーサー王伝説」の魔法使いマーリンやアレキサンダー大王も、その優れた能力から「インキュバス(サッキュバス)と人間のハーフ」であるとされている。 ■キリスト教以外の夢魔 キリスト教以外にも夢魔によく似た存在(特に男性の夢に現れ精を奪うもの)が現れる宗教・伝承は多く、世界中に見られる。これはおそらく、夢精の合理的説明として「夢魔」という存在が考え出されたものであるからと考えられる。 --------------------------------------------------------- 『夢 魔』 みすず書房 1979 辻井忠男(訳)フューゼリ (N. Powell 1973 Fuseli: The Nightmare. London, Allen Lane)
by sigma8jp
| 2008-11-22 22:40
| 堕天使と悪魔の階層
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